伯父の遺影と祖母の言葉

祖母の家で何よりも忘れられないのは、部屋の奥の仏壇にあったモノクロの大きな写真と、その写真に映る人を語る祖母の言葉でした。

そのモノクロ写真に映っていたのは、飛行服を着て飛行帽を被っていた伯父でした。

私が祖母にこの写真の人は誰かと聞いたのか、祖母の方から教えてくれたのか覚えていませんし、伯父がどんな表情をしていたのかも覚えていません。

でも何故かそれが強く捉えて離さず、畏れや恐れ、神々しさとまではいかないけどそれに似たような感じを覚えていました。だから心の中では伯父の遺影を直視してはいけない、できない感覚がありました。

祖母はその写真に映る人のことを「特攻隊にいてフィリピンで戦死した」と話していました。

そして「伯父さんのようにお国の為に戦ってくれた人がいるから、今こうして生きていられる。だから伯父さんには感謝しなければならないよ」と、祖母は必ずといっていいほど伯父のことを話すときはそう言いました。

小学生だったのであまりピンとは来なかったけれど、それはとても重くて大切なことだということと、あの伯父の遺影と祖母の言葉は私の中では一緒になって記憶されています。

あの遺影は今どこにあるのか、もうなくなってしまったのか、今となっては分からなくなってしまっていることがとても残念です。